2019.04.06

建物滅失登記の費用相場や発注時の注意点まとめ

「古家を取壊し、更地で売却したい」
「建物を建てようと思ったら、敷地内に知らない建物の登記が残っていた」

そんな時に必要になるのがこの「建物滅失登記」だ。

今回は、建物滅失登記の費用相場、所要期間から申請しない場合のリスク、発注時の注意点まで、なるべくわかりやすく解説する。

建物滅失登記とは?

建物滅失登記とは?

建物滅失登記とは、建物を取壊した際、その建物の登記記録から記録を落とすための手続きだ。
建物の所有者(登記記録に名前が載っている場合)は、建物を取壊した日から1か月以内に、その建物があった場所を管轄する法務局に申請する必要がある(不動産登記法57条)。

他にも「土地を調べたら、数十年前に取壊したはずの建物の登記記録が残っていた」などという場合にも、建物滅失登記を申請することになる。

建物滅失登記を申請するには

建物滅失登記は自分で申請することもできるが、発注する場合は「土地家屋調査士」に発注する。
土地家屋調査士は表示に関する登記の国家資格者で、建物滅失登記の申請代理は土地家屋調査士の独占業務となっている。


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申請しなかった場合のリスク

「10万円以下の過料」は本当か?

法律上、建物滅失登記をしなかった場合、10万円以下の過料に処されると規定されている。「過料」というのは罰金のようなものだ。刑事罰でなく前科が付かない点で罰金と異なるが、ほぼ同じものと思っていい。

しかし、登記実務の世界ではこの規定が厳格に運用されているとは言えず、今までにこの規定で科料に処せられたという話は聞いたことがない。

筆者も、30年程前に取壊された某大手企業の社宅の滅失登記を担当したことがあるが、登記官との間でも過料については話にすら上がらなかった。

もちろん今後税収が減少していけば、しっかり徴収するよう行政の方で方針を転換する可能性もゼロではないが、現在は「申請しなくても過料には処されない」と言っても過言ではない状況だ。

建物滅失登記を申請しないデメリットはもっと別のところにある。

解体したはずの建物の固定資産税納付通知が届く

固定資産税の納税通知の仕組み

家屋の固定資産税は、毎年1月1日にその所有者として固定資産課税台帳に登録されている者に対して課税される地方税だ。

固定資産課税台帳の整合性は、①登記記録との照合②職員の現地調査によってチェックされている。

つまり、建物を解体したにもかかわらず、滅失登記を申請しなかった場合、固定資産課税台帳に解体した建物の記録が残る。

職員も調査できる物件の数は限られているので、この場合、高い確率で解体前の所有者に納税通知が届くため、固定資産税の過払いが発生する危険性がある。

実際、仲介の担当者が年内に取壊した滅失登記の発注を忘れたまま1月1日を迎えてしまい、取壊したはずの建物の納税通知書に基づき、売主が固定資産税を納付してしまい、大クレームになったケースもある。

固定資産税と滅失登記の関係を知らなかったがために、エンドユーザーからの信頼を失ってしまったケースだ。

年内に滅失登記が間に合わない場合は

もし、建物を取壊したものの、年内に滅失登記が間に合わない場合は、市役所の税務課(区市町村によって名称が異なる)に「家屋滅失届」を提出することをおすすめする。

これは、市役所に対し建物を取壊した(=課税の対象ではなくなった)ことを知らせるための届け出であり、
前述した、法務局に対し建物を取壊した(=登記記録を落とす必要がある)ことを知らせる滅失登記とは異なるものだ。

また、前年に建物を解体し、滅失登記を申請することなく年を越してしまった場合も、すぐに市役所の税務課に問い合わせをすることをおすすめする。

「存在しない建物」の登記記録があると土地を売却できない

建物を建てる際、工事着手前に建築計画を行政に提出し、認可を受けなければならない。
これを「建築確認」というが、取壊したはずの建物の登記記録が計画敷地内に残っていると建築確認が下りない。

当然、建物の建築が出来ない土地に買い手が付くはずもなく、結果的に土地売却が出来なくなる。

ただ、この場合は決済日までに通常通り滅失登記を申請すれば良いだけの話だ。

それでは、「存在しない建物」が決済日直前にいきなり出現した場合はどうだろうか。

決済延期!仲介担当者の発注ミス?調査士の確認ミス?

「A建物を解体したので滅失登記をお願いします」と土地家屋調査士に発注すれば、通常は「A建物の滅失登記」を誠実かつ迅速に行ってくれる。

しかし逆に言えば、“それしかやってくれない”ということだ。

通常、もしその土地上にA建物のみならず、数十年前に取壊されたB建物が存在しても、それは依頼内容に入っていないので調査しないという調査士は多い

実際、決済日直前になって“B建物”の登記記録の存在が発覚し、しかもそれが前所有者の名義であったため、滅失登記の申請が出来ず、決済が延期になってしまったケースもある。

売主仲介担当者は「プロなんだからそれくらい確認して当然だ!」と主張し、
土地家屋調査士は「だったら依頼内容に入れておいてくれ!」と主張する。

いずれにせよ、こうなってしまったら後の祭りだ。

建物滅失登記の費用相場・所要期間

建物滅失登記の費用相場

建物滅失登記の費用は、4~5万円が相場である。
土地家屋調査士の作業内容は、登記記録を始めとした資料調査、現地調査、申請書・調査報告書の作成などである。
作業難易度としても簡単な部類に入るので、金額自体はどの事務所も大した差はない。

ただ、前述したようなトラブルが起きることがあるので、依頼する土地家屋調査士は慎重に選んだ方がプロジェクトに支障が出ずに済むだろう。

建物滅失登記の所要時間

所要期間は、解体業者の取壊証明書が用意されていれば、依頼日から7~10日程度で登記が完了するはずだ。

ただし、登記官が現地調査をする場合は登記完了までにより期間を要するので、もし急いでいるようであれば、依頼する際に土地家屋調査士にその旨伝えると良い。

最短で建物滅失登記を完了するには

建物滅失登記の審査にあたり、登記官は原則として実際に現場を見に行かなければならない。(不動産登記規則93条)
しかし、建物滅失登記の申請書とともに、土地家屋調査士が作成した調査報告書を添付すると、登記官は現地調査を省略することが出来る。(同条ただし書き)

建物滅失登記に限らず、登記を自分で申請した場合、登記官が現場に行かなければならないので、登記完了までに時間がかかる傾向がある。

また、仲介会社にあっては、エンドユーザーが自分で登記をする場合、自分で色々と情報を集めながら書類を揃えていく上、上記の実地調査が必須となるため、登記完了まで1か月ほどの期間を見てスケジュールを組んでおいた方が良い。

土地家屋調査にに依頼したとしても、実地調査を省略するかどうかはあくまで登記官の裁量であるが、良い土地家屋調査士であれば調査報告書を詳細に作るなどして、実地調査の省略を促し、早く登記が完了するよう尽力してくれるだろう。

建物滅失登記を信頼できる土地家屋調査士に発注するには

下記サイトでは、案件内容を入力すると最大3つの事務所から建物滅失登記の見積を取得することが出来る。
利用料は無料で、運営会社が土地家屋調査士との間に入り案件の調整を行ってくれる。
地域の指定も可能なので、土地家屋調査士を探している方にはおすすめだ。


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